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「恋愛時代」「カップルズ」とも濱口竜介監督作品との共通点が多く見られるのが興味深い。

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東京藝術大学大学院映像研究科第二期生修了制作作品集2008
エドワード・ヤンの恋愛時代01.jpg 【1日目】新進演出家のバーディ(王也民(ワン・イエミン))は新作舞台が有名小説の盗作だと騒がれ、カルチャー企業経営者のモーリー(倪淑君(ニー・シューチン))に泣きつく。問題の小説は彼女の義兄の作品なのだ。バーディ、モーリー、その右腕で親友でもあるチチ(陳湘琪(チェン・シャンチー))、チチの恋人で公務員のミン(王維明(ワン・ウェイミン))の4人は学生時代からの友人。モーリーの婚約者アキン(王柏森(ワン・ポーセン))は大陸へビジネスの勉強に行っていたが、彼女の悪い噂を聞きつけ台北に帰ってくる。彼は投資コンサルタントの友人ラリー(鄧安寧(ダニー・ドン))に相談するが、ラリーはモーリーの会社で働く若い美人フォン(李芹(リチー・リー))と不倫関係にあり、モーリーに事実を追及され、モーリーの会社の経営悪化につけ込もうとしていたところがやむなく退散。チチはミンから転職先を紹介されるが気乗りせずエドワード・ヤンの恋愛時代02.jpg、曖昧な返事をする。ミンは人当たりの良すぎる彼女の気持ちが分からなくなり、モーリーを槍玉に挙げると、チチと口論になる。 チチが帰宅するとモーリーから呼び出しを受ける。夜更けのプールサイドで2人は語らうが、チチは周囲から優等生ぶっていると言われるのが不満だと打ち明け、モーリーにも昔のように悩みを話してと訴える。【2日目】アキンはモーリーに、結婚の時期についてそれとなく探りを入れるが気のない返事。そんな折、彼はラリーに「モーリーとバーディが浮気している」と吹き込まれ激怒、乗り込んでいったTV局でバーディと乱闘を演じることに。モーリーはミンに昼食に誘われるが、チチが転職したがっていることを知り困惑、オエドワード・ヤンの恋愛時代03.jpgフィスでチチを激しくなじり、チチは自分の意向を無視したミンと絶交状態に。女優志望のフォンはチチの紹介でバーディの稽古場へ。そこでバーディから口説かれるが、彼がモーリーに呼び出された隙に、乗り込んできたラリーと鉢合わせ。同行してきたアキンは、モーリーとバーディの喧嘩の場面に遭遇して誤解が解け、バーディとも意気投合。自分の不手際で同僚を退職に追い込んでしまい落ち込んで帰宅したミン。すると家の前にはモーリーが待っていた。チチへのとり成しを頼もうとしたが、ミンは誰とも話す気は無いと無愛想に答え、2人は口論し、取っ組み合いの喧嘩に。ところが、成り行きでベッドインしてしまう。関係を急ぐモーリーを冷静に諭すミン。互いの感情は行き違う。チチはモーリーの義兄で、バーディが争っている作家(閻鴻亜(イエン・ホンヤー))の許へ。彼はかつて恋愛小説を書いていたが、今は厭世感に満ちた小説を上梓しようとしている。チチはそこで、「誰も私のことを分かってくれない」と泣き出し、作家から助言を受けるが、作家の妻であるモーリーの姉(陳立美(チェン・リーメイ))に追い出される。モーリーの姉と作家は仮面夫婦状態。TVキャスターの妻の方は仲を繋ぎ留めようと必死だが、夫はそんな状況に疲れ、反射的にチチに愛の希望を見いだし、タクシーに乗った彼女を追いかけるが、衝突して倒れてしまう。しかしそれが啓示になったのか、「深刻ぶらず、誠実に生きればいい。僕は間違っていた。」と、来た道を戻っていった。その言葉に考えさせられるチチ。そして【3日目】の朝がやってくる―(「エドワード・ヤンの恋愛時代」)。

 「エドワード・ヤンの恋愛時代」は、エドワード・ヤン(楊徳昌、1947-2007(59歳没))監督による1994年制作の台湾映画で、裕福なエリート階級に属しながら心に空虚感を抱く若者たちが、人生の転機を迎える3日間を描く青春群像劇。2022年に4Kレストア版が第79回「ヴェネツィア国際映画祭」にて初公開され、同年の「ニューヨーク映画祭」、第35回「東京国際映画祭」でも公開されています。1995年7月本邦公開で、そう言えば、香港のウォン・カーウァイ(王家衛)監督の「恋する惑星」('95年)なども同年同月の本邦公開でした。同じ台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督が「冬冬(トントン)の夏休み」('84年)、「童年往時 時の流れ」('85年)と田舎を舞台とした作品を撮っているのと対照的ですが、この監督も後に「ヤンヤン 夏の想い出」('00年)という田舎を舞台とした作品を撮ることになります。

 濱口竜介監督がエドワード・ヤン監督の映画を絶賛していますが、濱口竜介監督の作品と似ているところが感じられ、実際に影響を受けているのでしょう。濱口竜介監督の「ハッピーアワー」('15年)は複数の女性の物語が交差する群像劇でしたが、長尺で登場人物たちの会話と人間関係の変化を丁寧に追っている点が、この「エドワード・ヤンの恋愛時代」における都市生活描写と共通しています。また、「ドライブ・マイ・カー」('21年)とは、登場人物たちが過去の傷や愛の不在を抱え、他人との対話を通して自己と向き合う点で、この作品が持つ「喪失と回復」のテーマと通じます。特に夫婦やカップルの関係の歪みと、それを受け入れるまでの過程に共通点があるように思いました。


カップルズ11.jpgエドワード・ヤンのカップルズ01.jpg バブル経済終期の台北に生きる4人の少年たち。リーダー格のレッドフィッシュ(唐従聖(タン・ツォンシェン))、二枚目の女たらしホンコン(張震(チャン・チェン))、口達者なトゥースペイスト(王啓讃(ワン・チーザン))、新入りのルンルン(柯宇綸(クー・ユールン))。悪徳実業家を父に持つレッドフィッシュの号令のもと、エドワード・ヤンのカップルズ02.jpg詐欺まがいの荒稼ぎをしたり、一人の女の子を「共有」したりと、アパートの一室で無軌道で気ままな生活をしていた。 ある日、イギリス人の元恋人マーカス(ニック・エリクソン)を追ってきたフランス娘マルト(ヴィルジニー・ルドワイヤン)が彼らの前に現れる。レッドフィッシュは、右も左も分からない彼女を言葉巧みに誘い入れ、売春組織に売り飛ばそうと企むが、根は純情なルンルンがマルトを実家の屋根裏に匿い、レッドフィッシュの企みは水泡に帰す。悪名高い父親を疎ましく思いつつも、その冷酷な人生哲学に倣って生きるレッドフィッシュは、かつて父を破産に追い込んだ女アンジェラ(呉家麗(キャリー・ン))に対する復讐計画を練る。ホンコンに彼女を誘惑するよう仕向け、またトゥースペイストを占い師として彼女の許に送り込み、金を騙し取ろうとする。レッドフィッシュの父は失踪中で、暗黒街の組織は息子のレッドフィッシュを人質にとっておびき出そうとするが、組織の間抜けなヒットマンの2人は(呉念眞(ウー・ニェンチェン)/王柏森(ワン・ポーセン))は勘違いして、ルンエドワード・ヤンのカップルズ03.jpgルンとマルトを誘拐、しかしマルトが機転を利かせて2人は脱出に成功。レッドフィッシュは逆にヒットマンを手中にとり、父(張国柱(チャン・クオチュー))の隠れ家に案内するが、人生に疲れた父は愛人(葉全真(イエ・チュエンチェン))と共に心中した後だった。レッドフィッシュは、冷酷さそのものだった父が隠し持っていた弱さを初めて知る。ルンルンはマルトに想いを伝えるが、彼女は自分を危ない目に合わせた彼に怒りをぶつけ、一旦はマーカスに引き取られていく―(「カップルズ」)。

 「カップルズ」はエドワード・ヤン監督の1994年発表作で、第46回「ベルリン国際映画祭アルフレッド・バウアー名誉賞」、第33回「台湾金馬奨助演男優賞」(ワン・チーザン)、第9回「シンガポール国際映画祭監督賞」、第18回「ナント三大陸映画祭ナント市賞」などを受賞しています。1996年12月本邦公開で、陳凱歌(チェン・カイコー)監督の 「花の影」('96年/香港・中国)が同年同月の本邦公開でした。

 これも、複数人のカップルや関係性を群像劇として描き、会話劇を通じて人間関係の崩壊と再構築を描く構造が、濱口竜介監督の「ハッピーアワー」と似ており、都市生活者の複雑な人間模様を背景に、会話の積み重ねによってキャラクターの心理的変化を描き出す手法も共通しています。また、こちらも、登場人物たちが過去の傷や愛の不在を抱え、他人との対話を通して自己と向き合う点で、「ドライブ・マイ・カー」とも似ています。さらには、濱口竜介監督の「PASSION」('08年)がこの映画とよく似ているところがあるように思いました。
 
 濱口竜介 PASSION01.jpg「PASSION」は、東京大学文学部を卒業後、新設された東京藝術大学大学院映像研究科に改めて入学し、映画作りを学んだ濱口監督が、その修了作品として発表した恋愛群像劇。長年恋人同士だった一組のカップルが婚約を発表したのを機に、2人やその周囲の男濱口竜介 PASSION02.jpg女の間でもつれた恋愛感情が一気に顕在化する、そんな彼らの激しく揺れ動く恋心を、緻密な会話劇や驚異的な長回し撮影を通じて描写いた作品です。一院生の卒業制作でありながら、第56回「サン・セバスチャン国際映画祭」や第9回「東京フィルメックス」にも出品され、濱口監督の名前と才能が国内外に広く知られる出世作となりましたが、早くからエドワード・ヤン監督の影響を受けていたのだなあと。

濱口竜介 PASSION03.jpg 90年代の台北と現代の東京(郊外)と背景こそ異なりますが、両作とも、親密な関係にあるカップルや友人グループが、嘘、裏切り、隠された欲望によって崩壊していく過程を描いていて、エドワード・ヤン監督は「カップルズ」を「危険な」映画と位置づけ、濱口監督もまた、男女の恋愛における「PASSION(情熱)」が抱える危うさを容赦なく描き出しています。多少ネタバレになりますが、「カップルズ」では、リーダー格のレッドフィッシュが何を指針に生きればいいのかを虚無の中に見失ったまま終わるのに対し、最も純粋な心を持つルンルンがフランス人女性マルテと一時は危機的な状況になりながらも愛を貫くことで、周囲の空気が少しずつ浄化されていく流れです。「PASSION」も、主人公の男女カップル(省吾と果歩)は、同級生の結婚を祝うパーティーで、省吾の過去の浮気が発覚したことで激しい衝突を起こり、他のカップルにも同様の摩擦が生じて一時はカップルの組み換え状況になりはするものの、結局は元の鞘に収まりますが、しかしながらカップルの関係はこれまでとは同じものではなく、愛情の矢印が一致しない気まずい状況を浮き彫りにしたまま幕を閉じるという、こちらも、ハッピーエンドとやバッドエンドを混ぜたような終わり方です。(濱口監督がヤン監督作の影響を受けたのだろうが)濱口監督作品との共通点が多く見られるのが興味深いエドワード・ヤン監督の2作でした。

エドワード・ヤンの恋愛時代04.jpg「エドワード・ヤンの恋愛時代」●原題:獨立時代(英題: A CONFUCIAN CONFUSION)●制作年:1994年●制作国:台湾●監督・脚本:楊徳昌(エドワード・ヤン)●製作:余為彦(ユー・ウェイエン●音楽:林強(リン・チャン).●撮影:黄岳泰(アーサー・ウォン)/張展(チャン・チャン)/李龍禹(リー・ロンユー)/洪武秀(ホン・ウーショウ)●時間:127分/129分(4Kレストア版)●出演:陳湘琪(チェン・シャンチー)/倪淑君(ニー・シューチン)/王維明(ワン・ウェイミン)/王柏森(ワン・ポーセン)/鄧安寧(ダニー・ドン)/(李芹(リチー・リー))/(閻鴻亜(イエン・ホンヤー)/陳立美(チェン・リーメイ)●日本公開:1995/07/2023/08(4Kレストア版)●配給:シネカノン/ビターズ・エンド(4Kレストア版)●最初に観た場所:シネマート新宿(スクリーン2)(25-04-22)(評価:★★★★)

エドワード・ヤンのカップルズ07.jpg「カップルズ」●原題:麻將(英題:MAHJONG)●制作年:1996年●制作国:台湾●監督・脚本:楊徳昌(エドワード・ヤン)●製作:余為彦(ユー・ウェイエン●音楽:林強(リン・チャン).●撮影:李以須(リー・イーシュー)●時間:121分●出演カップルズ12.jpg:ヴィルジニー・ルドワイヤン/唐従聖(タン・ツォンシェン)/柯宇綸(クー・ユールン)/張震(チャン・チェン)/王啓讃(ワン・チーザン)/陳欣慧(アイビー・チェン)/呉念眞(ウー・ニェンチェン)/王柏森(ワン・ポーセン)/張国柱(チャン・クオチュー)/葉全真(イエ・チュエンチェン)/呉家麗(キャリー・ン)/ニック・エリクソン/ダイアナ・デュピス/林海象(特別出演)●日本公開:1996/12/2025/04(4Kレストア版)●配給:シネカノン/ビターズ・エンド(4Kレストア版)●最初に観た場所:シネマート新宿(スクリーン1)(25-04-22)(評価:★★★★)
張震(チャン・チェン)(当時20歳)

張震(チャン・チェン)ブエノスアイレス」(1997)/「グリーン・デスティニー」(2000)/「グランド・マスター」(2013)/「黒衣の刺客」(2015)
ブエノスアイレス チャン・チェン(張震).jpg 「グリーンディステニー」張しん.jpgグリーン・デスティニー5.png グランドマスター チャン・チェン(張震).jpg 黒衣の刺客ード.jpg


濱口竜介 PASSION04.jpg濱口竜介 PASSION 8.jpg「PASSION」●制作年:2008年●監督・脚本:濱口竜介●プロデューサー:藤井智●撮影:湯澤祐一●時間:115分●出演:河井青葉/岡本竜汰/占部房子/岡部尚/渋川清彦●公開:2008/03●発表:東京藝術大学大学院映像研究科・第二期生修了制作展●最初に観た場所:池袋・新文芸坐(24-05-09)(評価:★★★★)


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